あなたは「リーダーシップ」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか?
チームをコントロールできるリーダーの姿?圧倒的指導力をもつカリスマ?
「セルフリーダーシップ」とは、これまでの他者や組織に対する「リーダー」という捉え方(パラダイム)を変化させ、まずは「自分自身へのリーダーシップ」をはかるところから始めるという実践法だ。
何事も変化していく時代において、まず自分自身の内面を見つめてみることの重要性は計りしれない。それとともに、自分自身、言うなれば「自分の命」を最大限活用することによって、周囲の状況を、さらには世界を変えていく力を身につけることができる、と松岡克政氏(以降、松岡氏)は言う。
自分の可能性を高める「真の豊かさ」を手に入れるための”非常識”な講座について、2回にわたり松岡氏に語ってもらう。
第一章 「セルフリーダーシップ養成塾」は反省から生まれた。塾生と共創し、自己変革を起こす多彩なツールとは
「学び」が趣味のコミュニティを生み出してしまった…全てを断ち切り、「共に山に登る」仲間を募る想いで塾を立ち上げ
セルフリーダーシップ養成塾が生まれた経緯から、みなさんにお話ししたいと思います。
一つには、私の大きな反省があるのです。
「株式会社MatsuKatsu」を立ち上げた当時、マインドマップとフォトリーディングの講師として多くのワークショップを行っていました。そのうち、毎月定期的に集まるコミュニティのようなものも立ち上げて、ツールの学びとコミュニティとをあわせ、充分に楽しくワイワイやっていました。
でも、ある時ハッと気づきました。多くの方がワークショップで得た学びを仕事の場で生かさずに、趣味として楽しむようなコミュニティや学びの『場』を作ってしまったことに。
多少失礼な言い方をすれば、多くの人が「学び」に逃げてしまったと捉えたのです。もちろん、仲間内で楽しくやるのは素晴らしいことです。でも私は、実践するための優れたツールとしてお伝えしてきましたから、このことは非常に反省しました。
学びの場で得たことを仕事の場で実践することは、とても勇気のいることかもしれません。絶対に結果が出るということはありませんし、リスクもある。でも、実践を続ければ必ず自分を高め、強め、変えられるのです。
この経験から「全部断ち切る」覚悟で、2013年に「実践のための学び」をするために立ち上げたのが「セルフリーダーシップ養成塾」です。もしかしたら「実践」は、企業にいる方には「実戦」としたほうがわかりやすいかもしれませんね。
では、何と戦うか?
私は「自分の拡張をしていかない」現状に対して戦っていくことだと思っています。戦って良いものができるかはわからないですが、やってみない限り永遠にわかることはないのです。
山に例えると、1つの山に登れば次の景色が見えますよね。どんな景色かは登ってみないとわからない。私の反省は、山に登らないコミュニティを作ってしまったこと。だからこの養成塾では「一緒に山に登ってみよう!」という仲間を集めるような気持ちで募集しています。
「セルフリーダーシップ養成塾」は、セミナー業とコンサルティング業の並走で得たこと全てを注いだ結晶
独立するまで私は、一般企業でデザイナーをしていました。入社直後はプロダクトデザイナーでしたが、その後は情報デザインやソリューションデザインなど、形のないものをデザインしていました。
「デザインの考え方とビジネスを結びつけられないかな」と思って取得した中小企業診断士の資格がきっかけとなり、会社をやめて独立し、コンサルティング業を始めました。
同じ頃に出会ったのがマインドマップとフォトリーディングで、こちらにも非常に感銘を受けたのです。それで、インストラクターに応募してセミナー業も開始しました。
マインドマップやフォトリーディングを使いながらコンサルティングを行うと、クライアントの問題やゴールがどんどん可視化できるようになります。絶えず学びと実践を繰り返すことで私のなかのOS自体が常にアップデートしていきますし、力量もあがりました。この2つを並行してやってきた中で見つかった独自のメソッドを全て注ぎ込んだのが、セルフリーダーシップ養成塾です。
コンサルティングは単なるアドバイスではありません。知識だけを付与しても、実行しないと意味がありませんよね。私たちのコンサルティングは「共創パートナー」としてお客様に関与します。ティーチング、コーチングに加え、メンタリングも必要です。長い時間をかけ、その人、その組織が一番成長するように促すことが重要だと考えています。
老子の格言で『授人以魚 不如授人以漁』(魚を与えるのではなく、釣り方を教えよ)というものがありますが、まさにその通りです。セルフリーダーシップ養成塾においても、単に知識を付与するだけでなく、「どの一言を言えばこの人は気づき、進化するかな」ということを考えたアプローチを続けています。
ツールはあくまでもツール。活用できる能力を身につけ、「潜在ニーズ」を掘り起こす
さきほどの魚の釣り方でもう一つ重要なことがあります。それは「釣竿」です。「セルフリーダーシップ養成塾」では、さまざまなメソッドやツールを活用し、実践できる自分への変化対応能力をつけていきます。
まずはビジョンマップ。これに1日目から取り組み、自分の基準を定めていきます。
私が毎回みなさんにおたずねするのは「自分の株を何%持っていますか?」という問いです。自分の株を100%所有できていないな、と認識することから、自分の欲求を最大化していくことができるのです。そして定めたビジョンに向けて、コミットすべきゴールが見えてきます。
ビジョンはいわゆる打ち上げ花火のようなもので、「自分の答え」を探すことさえできれば、どこまで、どの方向へ行ったっていいのです。
一方で、日常の取り組みをバージョンアップさせるには何をしたらいいか。これは知的創造を行って設計するほかはありません。この知的創造へのアクセスに用いるのがツールです。ビジョンをもった上で、日常をバージョンアップさせるためにツールを使う。そのことで自己変革が起きて、結果的にビジョンに近づいていくでしょう。
「セルフリーダーシップ養成塾」では15個のツールを用いますが、極端なことを言えば「どれか一つでもヒットすればいい」と私は考えています。15個あるうち、必ず一つは自分に合うものがあるとわかっていますから。
大切なのは新しい取り組みを行うことで、「試してみて」「フィードバックがあり」「成果につながる」。この繰り返しによって、変化対応能力がつく自分になっていくのです。
また、自分にとって何が必要か、どれが高めたい能力かという「潜在ニーズ」に気づくことも大切です。どのツールを使うことで自分が動きやすくなっているかを確かめながら、自分自身のOSトレーニングを行っていきましょう。
ただし、ツールには落とし穴もあります。授業のような形で教わってしまうと、途端に価値を失うということです。人は、大事な瞬間に大事なものを渡されたとき、それを価値としてみなします。
私が気をつけているのは、本当に必要なとき以外には教えないということ。塾生が真剣に悩んでいるまさにその場面で「これが必要じゃない?」と渡したとき、「あ!」という気づきが生まれて、初めてツールは武器になるのです。ツールは、あくまでもツール(道具)です。ツールを役立たせる自分へと変化していくことが重要なのです。
私たちのポリシーで「Natural not normal」というものがありますが、常にやり続けた結果、本当の自然体のときに結果が出ることを目指しています。必要なときに、自然とツールが出てくるような状態ですね。
「常にやり続ける」というとハードな印象がありますが、例えば趣味の世界なら、できないことやわからないことは本やネットで調べたり、何度も繰り返し試してみたりします。そうするとわかることが増え、記憶しようとせずとも体が勝手に覚えます。努力せずとも成長できる。そんな学び方が理想だと私は考えます。
塾生のみなさんは、初日から2~3ヶ月で変化を感じ始めます。うまくいった事例は、塾内で成功事例として紹介するのですが、そのことが「こう実践すればいいんだ!」という学びにつながります。人間にはミラーニューロンというものがあり、誰かがやれたことは、自分にもやれていると思い込むことができるからです。
あいつがやれたから自分もやれるはずだ。そんな思いから塾への取り組みのコミットが深まり、塾生全体の成長が加速していきます。9期に参加されるみなさんにも、自己変革をぜひ感じて欲しいと思っています。
- 松岡克政(まつかつ)が語る、いまこそ、セルフリーダーシップで世の中を変えていくとき。【 後編は こちら 】
執筆/清水啓那